人を飢えさせる存在ひだる神
こんにちは。妖怪画家のヨハクです!
私は妖怪や和のモチーフの絵やイラストを描いています。
今回は人に取り憑く妖怪、ひだる神について調べてみました。
ひだる神は基本的には目に見えない憑き物で、人に取り憑いて飢えさせるといいます。
ひだる神は基本的には山などで取り憑いてきますが、取り憑かれてしまうと急に疲労感、空腹感を感じて冷や汗が出てくるようです。
それだけでは大したことはないのですが、恐ろしいのが歩けなくなってしまい、酷い時には気絶、もしくはそのまま死んでしまうということです。
ひだる神というのは人を飢えさせる憑き物の総称なので、ひだる神という名前の特定の妖怪がいるわけではないようです。
ひだる神の由来
”だるい”、”ひだるい”という言葉からひだる神という名前になったようで、ひだる神に取り憑かれた状態のことを餓鬼憑きと言います。
ひだるは漢字で饑と書きます。
空腹・飢えてひもじいという意味です。
またひだるいは徳島県の方言でも空腹の意味があるようです。
餓鬼憑きの餓鬼とは仏教の餓鬼のことで、欲望のままに悪事をした人は死後飢えと渇きに苦しむ餓鬼道に落ちるがその死者の魂のことを餓鬼と言います。
餓鬼道に落ちると飢えと渇きに襲われているのにも関わらず、食べ物や飲み物を手に取ると火に変わってしまうようです。
この飢えている餓鬼にちなんで餓鬼憑きと言います。
ひだる神は西日本に多いようなのですが、各地で呼び方は様々なようで、ひだり神、だり神、だらし、ひもじいさま等様々な呼び方がされています。
ひだる神に取り憑かれた状態”餓鬼憑き”の対処法
ひだる神は疲れている時や空腹時に取り憑くとされていたので、出掛ける前によく食べていくように、とされていました。
しかしその様にしたとしてもひだる神に取り憑かれてしまうこともあったようです。
もしひだる神に取り憑かれて身動きが取れなくなってしまった場合は、
- 何でもいいので一口食べる
- 手に米と言う字を描いて舐める
- 持っている食べ物を近くの藪に供える(投げ込む)
などとすると助かると言われています。
山に入る際は弁当などを持ち、ひだる神に取り憑かれた時用に最後まで食べずに少しとっておく、としている村の教えなどもあったようです。
どうやら、ひだる神に取り憑かれて餓鬼憑きになってしまった場合は何かを食べればいいようです。
ひだる神の正体
はじめひだる神の話を調べている時に、低血糖の症状なのではないか、という疑問を持っていました。
昔は今のように日々沢山食べることも無ければ、おそらく血糖値など知る由もなかったでしょう。
私も久しぶりに山や坂を登った日には体力の消耗が信じられないくらい激しくて2,3日ぐったりしていた記憶があります。
それではひだる神の正体は低血糖なのでしょうか。
実はそう簡単な話ではないようです。
ダリ(ある地域におけるひだる神の名前)と呼ばれる妖怪は山だけではなく、街中で人に取り憑き、また人間のみならず馬や牛などの動物に取り憑いて動かなくしてしまうこともあったようです。
また北九州でもダラシというひだる神の一種である妖怪が出たされて、その正体は山で餓死した者の霊が化けたものとか、その集合体のようなことを言われていたようです。
ダラシは山中の特定の坂などで取り憑くとされていますが、こちらもダリのように街中で取り憑くこともあったといいます。
よく四辻(今でいう交差点)で出ると言われています。
辻はあの世との境で悪霊や妖怪が潜んでいるとされているので、ひだる神は低血糖では説明のできない、超自然的な現象を引き起こす妖怪の類なのでしょう。
まとめ
人に取り憑いて空腹感や疲労感を感じさせて身動きを取れなくさせ、気絶させたり、最悪命を奪ってしまう”餓鬼憑き”状態にするひだる神。
主に山に現れるとされていて、空腹時に取り憑かれやすいとされていたので入山前によく食べることによってひだる神に取り憑かれないようにしていました。
しかし食べても取り憑かれることもあり、食べ物を一口食べたり、近くの藪に食べ物を供えたりすると助かるので、弁当を少し残しておくようにしていたようです。
また米と手に書いて舐めても助かるそうです。
話を聞くと正体は低血糖の症状のようですが、ひだる神が特定の場所で取り憑くとか、動物にも取り憑くとか、街中でさえ取り憑いてくると聞くと、低血糖ではない何か目に見えない存在がいたのではないかと思ってしまいます。
四辻に現れたという話からも、昔のひとはひだる神をあの世の境に潜む妖怪や悪霊の類だと認識していたのでしょう。
ひだる神に取り憑かれないように、美味しいものを沢山食べたいですね。
妖怪イラスト、ブログ / 妖怪画家ヨハク (Yohaku Yokai Art)
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